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月刊ぎふとPREMIUMの巻頭特集「日本の良きもの」に掲載

奥大和の歴史と、自然の中で営まれるものづくりを見事に表現した地域ブランドの仕掛け人
@OKUYAMATO NARA/株式会社クレアツォーネ

https://okuyamatonara.com

ブランディングは地域のものづくりにおいても課題の一つだが、その見事な成功例と言えるだろう。本稿では東京インターナショナル・ギフト・ショー春2025 第17回LIFEXDESIGNにも出展した奥大和地域ブランド「◎0KUYAMATO NARA」とそのブランディングを手がけた(株)クレアツォーネの取り組みを紹介したい。

ブランド構築を通して美意識の向上に貢献

@OKUYAMATO NARAは昨年2月の第15回LIFEXDESIGNに続いて2度目の出展となった。
「奥大和」は地図にはない地域名だ。奈良県南部および東部の19市町村を指す、という。今回の出展にあたって(株)クレアツォーネ/奈良県が発表したニュースリリースを引用する。
「山岳地帯が多くを占める奥大和の人々は、自然から大きな恵みを受け、山と共に生きながら、伐り出した木々を活用して生活必需品を作り出し、木工の伝統産業と奥大和の文化を育んできました。豊かな自然と深い歴史に育まれたこの地域では、素材と真摯に向き合い、誠実なものづくりを続けるブランドや作家が活躍しています」。

@OKUYAMATO NARAのブース

確かに昨年、初出展した@OKUYAMATO NARAブースからも自然が感じられた。森の香りがした。初めて見るはずなのになぜか郷愁のような想いを抱いた。「MURAO」、「APPLE JACK (エ房アップルジャック)」、「YOSHITANI (吉谷木工所)」、「IZURU面維鶴木工)」、「MORITO (森庄銘木産業固)」、「SKYWOOD(スカイウッド個)」の6ブランドが参加した今年のブースも同様だ。

「奥大和の『奥』という言葉には空間的な奥行きの深さと時間的な奥行き、奈良の悠久の歴史が凝縮されています。実際に現地を訪れ、非常に大きなポテンシャルを感じました。一方でその価値が伝えきれていない部分があるのではとも感じました」。
(株)クレアツォーネ代表取締役の草野信明氏はそう語る。

草野信明|株式会社クレアツォーネ

クレアツォーネ代表取締役の草野信明氏

草野氏は卸エム・シー・リビングで良品計画など多数のブランドのマーチャンダイジングを担当し2006年に独立。「ブランド構築を通して美意識の向上に貢献する」をミッションに掲げ、(株)クレアツォーネを設立した。
「美意識というのは物事の本質や背景にある価値、歴史、哲学を深く理解してそれを形や行動にする、つまりプロダクトやサービスを通して体現する能力を指しています。」
そう語る草野氏はこのミッションのもと、伴走型のブランディング活動を続けており、2007年からはジェトロ(日本貿易振興機構)の輸出有望案件支援事業の専門家としても活躍。台北の松山文創園属で行われた佐賀県主催の佐賀陶磁器展を企画運営。また徳島市の外郭団体主催による、経済産業省ジャパンブランド育成支援事業プロジェクト「KARAKURI」に携わり、徳島県内の家具・藍染ブランドのブランディング及びマーケティングを進め、中国市場を開拓するなど優れた実績を数多く残している。

当事者意識と仲間意識を持つことの重要性

奥大和の地域産業についてもジェトロから紹介された。
「まず地域ブランドカ向上のためのワークショップを全3回で行いました。8 社ほどが参加され、各ブランドのアイデンテイティの構築・形成からスタート。ターゲットとする市場とバイヤーから、さらにユーザー像まで深掘り、バイヤー・ユーザーと自分たちを結びつけるコミュニケーションのあり方、アイデンテイティを明確化していくところからスタートしました。我々はブランディングにおいて、クライアントである民間企業や団体組織が有する理念( ミッション、ビジョン、バリュー)を軸としています。経営層・経営層を含むプロジェクトチームと共に理念を定義し、あるいは必要に応じて理念を再定義し、各メンバーの解釈を共有していく。腹落ちさせ、自分ごとにしていただくことからブランディングはスタートします。今回はまず⑥0KUYAMATONARAというブランドのプレゼンス(存在感・認知度)の向上とバイヤーとの中長期的な取引関係の構築、すなわち『ただ発表して終わり』ではなく、ビジネスに結びつけていくことを目標に掲げ、それをメンバーで共有しました。さらにメンバーと共に奥大和地域の強みを洗い出し、参加されている企業が世界の市場を見据えた上でどのようなブランドアイデンティティを確立していくべきなのか考えていきました」(草野氏)。

MORITO(森庄銘木産業)は昨年に続いての参加。画像は「木材を使ったデザインコンペ2022」で金賞受賞した「shell x shell」

奥大和地域の特徴の―つが、作り手が大自然、木や水と近い距離で生活をしており、その上にものづくりが成り立っているということだ。吉野杉や吉野桧を活用するブランドも多く、また森林を管理し森づくりを行う事業者も参加している。
またもう一点の特徴と言えるのが、他府県からの移住者が多い点だ。なぜ移住したのか、どこに魅
力を感じたのか、移住者と元々住んでいた人々が一緒にそれを追求し、奥大和の魅力を深掘りした。その魅力、特徴が「⑥0KUYAMATO NARA-奥大和奈良森の暮らしのものがたりi」という出
展テーマに見事に表現されている。

APPLE JACK(エ房アップルジャック)は今回初出展。年輪が詰まった吉野杉とその木材を極限まで薄く削る職人技は見事だ

IZURU(維鶴木工)も昨年に続いての参加。日本の文化と美しい暮らしを体現するチェアやスツールを出展した

「地域ブランドにおいては時に『同じ釜の飯を食べること』も重要だと考えています。例えば商品撮影の時には大阪のスタジオを借り切って参加者同士が他のブランドの撮影を手伝い合ったり話し合ったり、奈良県の職員の方がカレーを振る舞ってくださってそれをみんなで食べたり…昭和的に聞こえるかもしれませんが、そんな中で仲間意識が育まれていきました」(草野氏)。
仲間意識は価値観と美意識の共有につながる。2度の出展で各ブランドそれぞれの特徴を際立たせながら、かつ見事に統一感のあるブースを造成できた背景にはこうした取り組みも作用している。
草野氏に改めて地域ブランディングの要諦を聞いた「自分たちの価値を再認識し、それをいかに磨き上げていくかが重要だと考えています。その背景には哲学・ブランド理念がある。そこを意識しながら活動していくことで、本質を捉え、目的に向かって一人一人が主体的に誇りを持って取り組んでいけるのではないでしょうか」(草野氏)。

®OKUYAMATO NARAのブースにはまさにそれが具現化されていた。と、同時に、日本の地域のものづくりの可能性も感じられた。ものづくりの可能性も感じられた。

@OKUYAMATO NARAのブース

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