本稿ではセミナーの内容を基に、一部編集して中小企業向けに小さく始めるデジタルブランディングに必要なDXの基礎知識ついてご紹介します。
デジタルとは
DXの前に、長く使われている”デジタル”について、改めて考えてみます。
かつてのやり方を“アナログ”と言うのに対して、コンピューターで作ったり、保存したりしてデータ化することを、“デジタル”化と言う表現をしています。
つまり様々な情報がコンピューターで扱えるようになる変化のことを「デジタル化」と言います。
情報をデジタル化することで、今までできなかったことができるようになりました。
手描きからワープロ、レコードからCD、タイムカードからIDの入館パス、手で切っていた切符から自動改札などです。
このデジタル化自体がイノベーションと言うことよりも、デジタル化されたデータを中心として新しいサービスが次々と生まれているということ、ここがこの後のDXでも重要になってきます。
DXの定義
新聞でもテレビでも毎日のように見聞きする、“DX “は国を挙げて推進していますが、少し漠然としているように思いますので、経産省の定義を参照して具体的に考えてみます。
経産省では「DX推進ガイドライン Ver.1.0(平成30年12月)」により、DXを以下のように定義しています。
「デジタル化」が世の中全般に使われたことに対して、「DX」は企業に向けて使われます。
”データとデジタル技術を活用する”、 そして、”製品やサービス、ビジネスモデルを変革する”
更に、”業務そのものだけでなく組織やプロセス、企業文化を変革する”
これがDXということです。
つまり「DX」とはデジタル化によって起こる企業の変化のことです。
ポイントは先ほどお伝えしましたように”データを活用する”、ということです。
”DXすることが企業文化や風土に変革をもたらす”、と言うことではなく、
”企業の文化を変えないとデジタル化についていけない”、と理解した方が良いでしょう。
なぜ国を挙げてDXを推進しているのか
経産省によると、古い基幹システムのまま事業を進めていることで、生産性があがらない企業が多く、人材不足と古い基幹システム問題で2025年から2030年までの間に、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると言われています。
逆に、計画通りにDXを推進すると、2030年の実質GDPにおいて130兆円の押上げを期待できるとされています。
少子高齢化により労働人口が減少しつつある日本では、ビジネスモデルの変革やIT人材の育成を急ぐことが求められています。
企業が生き残るためには、DXを通した企業の変革は絶対条件と言えます。
経済産業省 DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜より
DXを成功させるためのポイント
DXをわかりやすく理解するために、さらに分解してみます。
図の下から見てください。
まずはDXのベースになる技術、つまり「クラウド」「AI(人工知能)」「IoT(Internet of Things)」などの機関システムです。
このシステムを利用して、社内のデータを活用することで社内のシステムのDX・社外サービスのDXがなされ、
初めてDXした新しいビジネスモデルを作ることができます。
DXを進める上での1番のポイントは一番下のどんな機関システムを使うか、といったことではなく、左側のどんな社内システム、社外向けサービスを活用するかでもありません。
右側の人材・社内文化にあります。
一番弊害になるのが、社内の人材や文化だと言われています、ここがDXしないと新しいビジネスモデルは生まれません。
いきなり新しいビジネスモデルを作ろうとしても、難しいので、今までの問題点、例えば年長者の不理解、社内の担当者の不在、古い既存システムの移行ができない、ベンダーへ丸投げで社内では何もさわれない、
こういったことを少しずつ改善して、小さくても簡単なものでも構いませんので、社内で行うモデルを考えてみて欲しいと思います。
DXに向けたデジタルコミュニケーションの転換
DXに向けて、今までの自社のビジネスモデルからデジタル化できることを考えてみましょう。
1つずつでしたら進められそうでしょうか、ポイントは今までのデータの利用です。
例えば、リモートワークの際にZOOMで社内会議を行なう、もちろんここからはじめるのですが、これだけではDXではありません。
DXに向けたデジタルのビジネスモデルの例1
リモートワークの実現のためのビジネスモデルを考えてみましょう。
社内のデータを利用しながら、リモート会議、情報連携、タスク管理、コラボレーションなどのサービスを連携させることで働き方のDXを実現します。
このようにデータを活用することがDXになります。
DXに向けたデジタルのビジネスモデルの例2
では、販売管理ではどうでしょうか。
下の図はECサイトと店舗販売をデータで結んでDXした例です、ポイントは店舗とWEBのデータの統合です。
ここでもデータの利用が大切になります。
店舗とWEBのデータを統合することにより、店舗で見てその場でウェブで購入し、自宅に配送したり、Webで閲覧した商品を店舗で確認したり、店舗で接客した商品を後日ウェブで表示させたり、といったようにシームレスなサービスが可能になります。
DXがブランディングを加速させる理由
「DX」「デジタル化」というと、“どんなデジタルツールを利用するか”、といったことを真っ先に考えがちですが、
“どんなデジタルツールを利用するか”は所詮手段ですので、“どのデータをどのように利用するか”、を考えることがDXです。
自社のサービス・製品・ブランドのデータをどのように利用してトランスフォームしていくのか考え、身の回りの小さなことから進めてみてください。
“デジタルトランスフォーム”を“コーポレートトランスフォーム”と捉え、デジタルを手段と割り切り、スピードを持って会社の変革を進めることができれば、顧客や従業員とのコミュニケーションが変化し、ブランドの価値を伝える新しいサービスが次々と生まれると思います。