佐賀県、ジェトロ佐賀による陶磁器事業者ブランディング、海外販路開拓支援業務を終えて
2020年9月より、佐賀県にある5つの陶磁器ブランド(窯元、商社)のブランディングからマーケティングを3月末まで実施致しました。自社ブランドの独自性を明確にし、自社ブランドに適した中国と台湾市場のユーザー、バイヤーを見つけ出す。バイヤーの独自性を理解した上で、双方の独自性を活かし、如何にユーザーの求める経験を提供できるかをミーティングの中で共に考え、実行に移し、成果につなげるという7ヶ月程度のプロジェクト。ブランディングと海外販路開拓の整合性の図れた意義のあるプロジェクトだったと自負しております。
今回のプロジェクトを簡潔にまとめますと、
ブランディングからスタートし、ブランドに適したバイヤーのリストアップ、その中で優先順位の高いバイヤーへのヒアリング、ヒアリング結果を検証した上での商談バイヤーのリストアップ、商談バイヤーを想定してのロールプレイング、商談実施、アフターフォローというスキームでした。短期間ではありましたが、リモートによるギュッと凝縮した、より実践的な内容となっています。
このプロジェクトをブランディングの流れに沿って振り返ってみたいと思います。基本的に5つのブランドとの個別ブランド会議となり、経営者を主とした各ブランドのプロジェクトメンバーと進めていきました。
1.セミナー
ブランディングについての基本となるブランドアイデンティティやブランドイメ
ージ、ブランドコミュニーケーションについて説明するセミナーの実施
2.ヒアリング
各ブランドの理念や歴史、ストーリー、ものづくりに対する
姿勢や顧客との取り組みの姿勢などについてのヒアリング
3.ブランドアイデンティティー フィロソフィーの可視化
ヒアリング内容を基にキャッチボールを繰り返しながら、フィロソフィー、つまりミッションやビジョン、バリューの可視化。
フィロソフィーとの整合性を図りながら属性やパーソナリティ、ベネフィットを決めていきます。
ここまで来ますと、どのブランドも自社の独自性、つまりブランドアイデンティティというものがより明確になってきます。
4.ブランドイメージ
今までの取引実績とブランドアイデンティティを基にしながら、
どのようなユーザーが自社ブランドの提供するベネフィットを価値と捉えるか、
言い換えるならば、ブランドとの繋がり、器を用いることで得られる経験や感情を欲しているかを共に考え、
ブランドに相応しいユーザーとそのユーザーが訪れる可能性の高いショップやホテル、レストランを定めていきます。
5.ブランドイメージ中国、台湾市場のバイヤーソーシング
ここまでの内容を基に中国、台湾市場のバイヤーソーシングを行い、其々の市場30ブランドずつリスト化。
その中から、より詳細を知りたいと思えるヒアリングに相応しいバイヤーを10ブランドずつ抽出します。
6.ブランドイメージ ヒアリングの実施
自社を知り、相手を知り、その上で「伝え方を知る」これがブランドコミュニケーションです。
後ほど紹介するMDに基づき選定し、サンプルとして中国と台湾に送った器と、こちらも後ほど紹介しますがSAGAMAブランドサイトを活用したヒアリングの実施です。
独自性の高いリアルやデジタルのミュージアムショップやライフスタイルショップ、セレクトショップ、スペシャリティショップ、レストラン、ディストリビューターにブランドアイデンティティから始まり、取り扱っている器や器の選定基準などについて、より細かくヒアリングしています。
SAGAMAブランドサイトの写真、映像より5ブランドの世界観や独自性、奥行きを感じてもらった上で、サンプルを手に取ってもらったことで、リモートではありますが、F2Fと遜色のない、具体的なコメントも得ることができています。
7.ブランドコミュニケーション:MD
ここからブランドコミュニケーションになりますが、「MD」つまり品揃え計画の立案を行います。
具体的な手順としては、取扱アイテムを4象限マップにプロットし、今までの実績を検証した。
ブランドアイデンティティとの整合性を図りながら、最適なアイテム20ずつ選定しています。
8.ブランドコミュニケーション:映像と写真の撮影
ブランドアイデンティティ、その中でもミッションをより強く意識しながら、一貫性を図れるように佐賀県内の各
ブランドの細工場やショールーム、有田焼、伊万里焼の原点とも言える泉山磁石場、陶山神社にて
映像と写真の撮影を行っています。
9.ブランドコミュニケーション:写真の撮影
ブランドの独自性に共鳴するであろうユーザーをイメージし、
ブランドや器にふさわしい「B&Bイタリアの青山ショールーム」にてインテリアシーン、
代官山の「フードスタジオMo:take」にてフードスタイリング、
同じく代官山の「Spazio CREAZIONE」にてプロダクトの撮影です。
10.ブランドコミュニケーション:ブランドサイトの構築
5ブランドのブランドアイデンティティ、つまり独自性がユーザーやバイヤーに的確に伝わるように、フィロソフィーや代表者のメッセージ、ヒストリー、ストーリー、ライフスタイル、細工場、プロダクトが伝わるブランドサイトを英字と繁体文字、簡体文字の3言語で構築しています。バイヤーの母国語にて表記しているため、バイヤーの5ブランドに対する理解度、関心度も高く感じます。
11.ブランドコミュニケーション:商談バイヤーの選定とマッチング
商談バイヤーの選定とマッチングです。5ブランドの独自性とバイヤーの独自性を考慮し、親和性の高さと成約の確度の高さを基準として、優先順位設定し、其々のブランド、バイヤーに適した商談を30件セットしています。
12.ブランドコミュニケーション:商談に向けてのプレゼンテーションツールの制作
基本的には、SAGAMAブランドサイト内で表現されていない取引実績、つまりショップやホテル、レストランとの取り組みの事例写真集やバイヤーへの提案書、企画書などを、バイヤーのブランドサイト、ECより独自性を理解した上で制作しています。
13.ブランドコミュニケーション:商談のロールプレイング
マッチングが決まっているバイヤーを想定しての商談のロールプレイングです。画面共有し、SAGAMAブランドの画像、映像、テキストと制作物を画面共有し、プレゼンテーションとヒアリングをテンポ良く、内容濃く進めていけるように繰り返し実施しています。
14.ブランドコミュニケーション:商談
いよいよ商談です。予定では1週間で全てを実施する予定でしたが、さすがに人気店のスケジュールを抑えるのはとても難儀であり、結局3週間かけて実施しています。其々のブランドとバイヤーが初対面とは思えないほど、お互いに理解できていたため、より具体的な成約に繋がる商談となっています。初めての商談から1週間程で3件の成約と幸先のよい出足です。
15.ブランドコミュニケーション:報告会
SAGAMAプロジェクトの締めとなる報告会です。
プロジェクト参加陶磁器ブランドとプロジェクトに関心のある陶磁器ブランド、ジェトロ佐賀の皆さん、佐賀県庁の皆さんが参加しての、有意義なプロジェクト内容の検証の場です。
ブランディングと海外販路開拓を並行して実施するプロジェクトを参加された陶磁器ブランドの皆さんを良い意味で刺激するものになったように感じています。
今回のSAGAMAプロジェクトを1つのきっかけとして、ミッションの実現やブランド価値の向上、発展、事業承継、技術継承、顧客の喜びに繋げていければ、我々クレアツォーネ一同(草野信明、草野真美子、小高啓子)にとってこの上ない喜びです。
このプロジェクトを通して、佐賀県の有田焼、伊万里焼をはじめとした陶磁器を今まで以上に愛おしく感じるようになっています。